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不意打ちの白 / 2020年7月19日 10時44分

横坂美喜
新潟県

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階段途中に黒い箱が置いてあった。うちによく届くZOZO箱みたいだ、いや、中身は箱馬だと知っているけれど。 部屋まで運ぶ。それにしても本当に真っ黒だ。開梱してドキュメント類を確認……”ご自宅以外での使用”はNGか、はい。 箱馬主はTHEATRE E9 KYOTO という劇場なんだね。KYOTO EXPERIMENT会場のひとつ……、今年はKEX流れたんだよなー。あ。12月に児玉北斗さんの公演がある!、けど、そのころの世の中はどんな景色なんだろうか。 昨日はNoism2公演のレパートリーで、舞台上の箱馬を目にした。 今回の『黒い箱を預ける[家]』は家で箱馬を預かる試みだと知った時、最初に思い出したのは、かつてNoism『ホフマン物語』で壁のように積み上げられた箱馬だった。それにしてもいいタイミングでレパートリー公演を見たものだ。 箱馬って、黒いのと塗装されていないのとどちらがポピュラーなんだろうと思って画像検索をする。なんだか色以前に、丸い穴が開いているタイプは珍しいみたいだな。というか、どこに置こうか。 とりあえず座ってみる。しかし、そもそも預かりものを床に置くのはいかがなものかという気がして、窓際のFFファンヒーターの上に置く。ふだん視界に入るし、外の景色も見えるしね。 ところで返送に備えて外箱も確保しておかないといけないんだな。体積二倍までは考えていなかった。ダンボールは物置に置いてこよう。 京都METROのダムタイプ古橋悌二生誕祭『LOVERS 60』配信を見る。何だか部屋の京都度が上がった日になった。そういえばダムタイプの公演が感染拡大防止のために流れてからも、京都に行きたい気分は残り続けていたんだった。

 

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ただいま、箱馬。馴染んだじゃないの。ツヤ消し塗装だからか……。

 

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【シアター・マテリアル/黒い箱を預ける[山]】、という試みを知る。もしもいま預かっている箱馬が、任意の物理空間と交換可能だったらどこと交換しようか。箱馬サイズの光源があったら気が晴れるだろうか。梅雨明けまだかな。 

 

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ファンヒーターの上の箱馬 / 2020年7月19日 9時46分

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このさき、家の中で箱馬を預かる機会はまずなさそうなので、まじめに写真を撮ることにした。 FFFファンヒーターの上だと水平が出ない、なんだか気持ち悪い。おまけのブラシの柄を箱馬の下にかませて調節、よし。車に積みっぱなしだった三脚を持ってきて、マニュアルでピントを合わせる。 塗装された木肌を拡大してしみじみ見るとか、素朴に考えたら随分奇妙なことをしている。向かいの家の洗濯物のシーツが風になびいて、箱馬ホールからのぞいた。不意打ちの白は眩しい。撮りそびれたので再びシーツがなびくのを待つ。なにやってんだ。 楽しくブツ撮りしていないで、すこし能動的に箱馬を使うことも考えた方ががいいのでは?と思って、床に置いて踏み台昇降をする。ちょっと軋むけどお立ち台みたいだ、プレゼンの練習に使ったら気合が入るかもしれない。 うわ。 箱馬を床置きしたのを忘れていた。突然出くわすとまごうかたなき障害物だ、しばらくこのまま置いておいたらフレイル予防になるだろうか。無理か。 陽射しがまだあるので枕干す。コンクリートで傷つけないようにしないとだな。

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​枕を干す /2020年7月19日 14時31分

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​ZOOM翌日 / 2020年7月23日 9時49分

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間に合わせで買ったヘッドセットでzoomミーティングに参加した昨晩。ああ、抜け殻が箱馬の上に置きっぱなしだ。分別しよう。水平な台の上は物が置かれがち。

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[山]が中断されたことを知る。山中と比べて、やはり家の中というのは安全地帯なのだなと改めて思う。雨風しのげるだけでも全然違うしね。なんだか箱馬を預かるというより、保護している気分になってくる。

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明日には箱馬を送り返さないといけなんだっけ。結局、FFの上が定位置だった。部屋の片隅で丸い穴が開いているというだけで、時おり箱馬目線を感じたり感じなかったりしたけれど。 ところで箱馬目線てどう見えるんだ、見てみようか。

 

8/1 

箱馬目線は意外と視界が狭かった。拭いておこうかと窓際から移動させたら部屋がすこし明るくなる。梱包いちど目、エアクッションが歪んだのでやり直し。不器用か。 webで集荷依頼をして、玄関に運んだところで家族にみつかった。 「重くなかった? よく持てたね、何これ」 「箱」 「箱の中に箱がはいってるの!?」 ヤマトまだかな。 例年なら花火のアレコレの混雑状況を気にするところだけど、今日はなにも考えなくていい。期日指定に焦って早めに梱包したけれど、改めてお届け予定日検索をしたら余裕だった。京都は近い。

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箱馬目線 / 2020年8月1日 10時36分

〈プロフィール〉

横坂美喜(よこさか・みき)

コンテンポラリーダンス鑑賞が好きで、NoismサポーターズUnofficial事務局の一員です。趣味はダム巡り、現代美術鑑賞。抽象芸術の言語化についてよく悩んでいます。

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