腰掛け中 / 2020年7月14日時刻不明

​佐藤雅志

​自営業/20代/京都府

私の自己紹介と部屋紹介からまず始めることが適当だと思います。私は「非実用品店めだか」というお店を経営していまして、その店舗に住んでいます。建物は築60年以上の平屋で面積はキッチンと収納を除けば20平米、10畳ほどでしょうか。室内は商品を並べる棚や机が約10個あり、その上は商品でいっぱいになっています。常時確保されている私のプライベートスペースは机周りの1畳のみで、営業時間外の食事や睡眠はそのつど折りたたみ机や布団を出して行っています。リビングと呼べるような場所は一切ありません。したがって、一日の中に家具を移動する機会が多数あり、この頻度は他の人と比べて多いと思います。

 

箱馬到着前、家具/物の多さと家具移動頻度を踏まえて「箱馬一つ増えたところで邪魔にもなんにもならないだろうな」と構えていました。 712日、配送された真っ黒に塗ったダンボールを見て、その箱馬ピッタリの梱包に感心し、これを10個配送・返送するための送料を頭の中で計算しました。私は舞台を使用することがないため、箱馬というものを目にしたことも触れたこともありませんでした。そのため、箱馬の黒が畳に付着しないか少し心配で、指で軽くこすり確認したことを覚えています。不着の恐れなしと確認したあとはどこに置こうかなーと考え、写真1のいい感じの隙間に置くことに決定しました。 到着後一週間程度はせっかくあるのだし使わないと損だなという貧乏性の心理が働いていたためか、折りたたみ机があるにも関わらず壊れたゴリラ人形を修理するための作業台にしたり、腰掛けたりして使用していました。畳生活のため、手頃のイスを持っていなかったのでイスとして使用するためにはちょうど良かったのですが、なぜかそうした使用も一週間を過ぎれば不思議と行わなくなりました。その後写真1の場所から他の場所に移動することにしました。残念ながら写真は無いのですが、その場所は食卓を出したり布団を敷いたりする際も箱馬を動かす必要がない場所です。そして、さらにその箱馬に商品である絵画を立て掛け、箱馬は天面を除いてほとんど見える箇所がなくなってしまいました。そうして、箱馬は覆い隠されたまま残りの二週間が過ぎていきます。  

 

配送直後 / 2020年7月12日

ゴリラ人形修理中 / 2020年7月14日時刻不明

さて、上述のように私はお店を経営していますので、店を開けるためには店にいなければなりません。また、その店であるところの建物は家でもあるため、店を閉めるとそのまま連続的に帰宅となり、帰宅の際にその建物から出ることはありません。したがって、私が箱馬の置かれているところの家/店舗としての建物の中にいる時間は他人と比較してかなりの長さになると思います。このように書いていて今気づいたのですが、この企画の参加者のうちで箱馬と同一建物内で最も長い時間を過ごしたのは私ではないでしょうか。しかし、リモートワーク隆盛極まる現今、それも定かではありませんね。他の人のレポートが非常に気になってきました。脱線してきた話を戻すと、この段落で言いたかったことは箱馬と長い間共に過ごしたということです。  

 

 

しかし、覆い隠された箱馬は私の目玉の視野の内には入ってきません。開店/閉店を問わず、私がいるスペースはパソコンの置いてある机であり、そこからは箱馬は全く見えません。今振り返れば、あの場所に置くことと絵画を立てかけることは箱馬を収納することだったのだなと思いました。目の触れない場所へと、目障りではないような仕方で箱馬は部屋の中を流れていきました。冒頭で述べたように、邪魔にならないだろうと見込まれていた箱馬は私の予想に反して案外邪魔になっていたようです。私は箱馬と同一空間に長いあいだ居たようですが、しかし、私の注意の地平から箱馬は逃れつつあったようです。 今、座っているイスから壁を回り込むように首を左に捻らせれば箱馬が81日まで居た場所が見えますが、そこには箱馬を隠していた絵画がテーブルに立て掛けられているだけです。

商品を載せて / 2020年7月17日

プロフィール〉

佐藤雅志(さとう・まさし)

非実用品店めだかという古道具屋のようなお店をやっております。

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