2020.08.03

83日、受け取り日。すっかり夏らしくなったと思ったらもう8だった。7月はロームシアター京都に出入りしつつ、吉祥寺シアターの[山]の方をリモートで進めていた。三週間はあっという間に過ぎ、日本各地に送られた箱馬のことを思い返すこともほとんどなかった。というより、そういう気分はどこか世話っぽく余計に感じられたので、意識的に忘れるようにしていた。

11時半ごろ、中谷さんと昼食がてら東福寺の「パンとコーヒーとひらりんと」で打ち合わせをした。鶏そぼろの乗った日替わりピザを食べた。劇場には14時前に到着。事務所に挨拶をして、検温をし、エアコンのリモコンをお借りした。15時半ごろ、ヤマトのトラックが到着。発送時と同じドライバーの方から箱馬の入った黒い段ボールを6個受け取る。三週間のホームステイから箱馬が遥々返ってきたことをようやく実感し、色々思うが、数が足りない。ほぼ半数の箱馬がまだ届いていない。このあと別のトラックで運ばれてくる可能性も捨てきれないと思い、最寄りのサービスセンターに問い合わせてみたが、今日付の荷物はもうないとのことだった。発送リストを確認して未着の方に連絡を入れる。そして、あらためて7日の午前中に時間指定で送っていただくことになった。

 

もはや今ここにある6個よりも、ここにない4個が気になっていた。もしかすると返送日時以前に、箱馬の存在自体が忘れられていたんじゃないかという期待感があったのだった。期間中、箱馬と積極的に関わりを持ってもらおうと思えば、あらかじめ演出的な制約や補助線を設けて、使い方・預かり方を規定すればいい。箱馬を〈貸し出す〉という企画だったらそういう方向性もあり得たかもしれないが、一応こちらのスタンスとしては箱馬を〈預ける〉ということなので、箱馬を主体にするのではなく、あくまでそれぞれの生活の現場である〈家〉を主体に考えたかった。だから個人的には家の中で箱馬とどう関わるのかということ以上に、箱馬を介して箱馬以外の空間との関係が再編されることを期待していた。

 

この日到着しなかった箱馬4が、それぞれ家の中のある一定の位置に固定されたたまま放置されている状況を思い浮かべ、アーカイブへの不安は半分ぐらい解消された。なんとかなると思った。届いた6個の箱馬はまだ開封せず、外の倉庫に格納して、帰った。

2020.08.07

87日。午前中に指定したため8時半に行く予定だったが、寝坊して9時ごろ劇場に到着した。まだ箱馬は届いていない。事務所に挨拶をして、検温をし、ロビーのエアコンのリモコンをお借りした。未着の内1件は翌日の4日に届いたそうで、立て替えていただいた代金を精算した

吉祥寺シアターの[山]についてのテキストを書いたり、鴨川沿いのベンチで横になったりしながら待っていた。もうめちゃくちゃ待った。ヤマトのトラックが到着したのは12時ごろだった。箱馬の入った黒い段ボールを3個受け取り、これで箱馬10個すべてがTHEATRE E9 KYOTOに無事に返ってきた。

 

今日届いた3個と倉庫に保管されている7個を舞台上に運ぶ。しばらく眺めたあと、事務所でお借りしたカッターで封を開け、箱馬を一つ一つ取り出していく。テープの種類や貼り方になんとなく個性が見えたが、中にスッポリ納まっている箱馬は三週間前に梱包したそれと何も変わらない。もはや7月に発送してから一度も開封されずにそのまま送り返されてきたんじゃないかと思った。しかし発送時とは違って、箱馬一つ一つはどこか違った雰囲気を帯びているように感じた。箱馬の中の空洞がそれぞれ別の何かによって埋められ、箱馬の持っていた雰囲気が内側から書き換えられているような感じがした。箱馬の丸い穴の中を覗くと、丁寧に梱包された出雲そばと対面した。箱馬の中に忍ばせていたいくつかの〈おまけ〉が、家で取り出されることなく箱馬と一緒に返ってきていた。このとき初めて、劇場に箱馬が返ってきたというより、箱馬が家から送られてきたように思え、時間の蓄積と空間の奥行きを感じたのだった。

すべての箱馬を取り出し終え、劇場の方に立ち会ってもらって状態の確認をしてもらう。特に損傷などもなく返却完了、箱馬はまた外の倉庫に格納した。翌週にE9予定されていた公演は開催見送りになってしまったので、また元どおり劇場の活動に動員されるのはもうしばらく先になりそう。実際三日間しか劇場には通ってないし、自分はただ箱馬を送って、受け取っただけだが、ロングラン公演を終えたような妙な達成感と解放感があった。手元に返ってきた〈おまけ〉の出雲そばは中谷さんにあげて、自分は造花を一本持ち帰った。帰り道、デカいコーラを買って帰った。

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