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2020.07.10

このたびは箱馬をお預かりいただきありがとうございます。想像していた以上に沢山のお申し込みをいただき、本当は申し込みいただいたみなさん全員にお送りしたかったのですが、箱馬の数と予算に限りがあるので、今回は抽選で決まった十名の方々に一つずつ預かっていただくことにしました。

箱馬の機能の本質は空間を埋めることです。何もない空間を見えるように、手に取れるように、移動できるように、そして使えるようにすること。そのために形を与えられ、固定されたものが箱馬です。THEATRE E9 KYOTOの箱馬は、黒い劇場空間を埋めるため、表面を黒く塗装されています。劇場空間から切り離され、別の環境下に置き換えられたとき、その「黒」の持つ意味合いも変わってきますが、箱馬そのもののありようは変わらないように思います。劇場においても家においても、箱馬はその大きさ分の空間を占有します。この三週間の間、みなさんの家は箱馬個分狭くなりますが、代わりに劇場には箱馬十個分の空白が生まれました。劇場に生まれたわずかな空白にも想いを馳せながらお過ごしいただけると幸いです。

それでは三週間よろしくお願いいたします。

7月10日、発送作業のためにE9を訪れた。事務所に挨拶をして検温をする。劇場内は別の団体が利用されているのでロビーをお使いくださいとのことで、箱馬はすでに10個まとめてロビーに置かれていた。3月に公演で使用したときにはなかった『THEATRE E9 KYOTO』のロゴが側面に印字されている。ロビーは蒸し風呂のように暑かったので、事務所でロビーのエアコンのリモコンをお借りした。

はじめに事前に黒く塗装した段ボールを組み立てる。箱馬とほぼ同サイズの真っ黒の箱ができた。それから箱馬をプチプチで軽く包み、黒い箱に収めていく。箱馬を単体のモノとして送ることにどこか違和感があったので、今回箱馬のほかに〈おまけ〉を同封した。のちに返却する箱馬とは別で何か手元に残るもの、劇場からやってきた箱馬と家の中の生活とを緩やかにつなぐものになればという思いで10種類のモノを用意して、丸穴から箱馬の中に収めた。「喫茶用アイスコーヒー」だけサイズ的に入らなかったので諦め、代わりに近くの鴨川で拾った石を入れた。黒い箱の中に黒い箱が入っていて、さらにその黒い箱の中に何かしらモノ(おまけ)が入っているという構図。外側の黒い段ボールと〈おまけ〉のモノに挟まれることで、箱馬はその箱馬性を少し取り戻したような気がした。

すべて梱包し終えたあと、企画のガイドラインや返送用の伝票をまとめたクリアファイルが数点入ってないことに気づき、梱包を一つ一つ解いて確認していく。このおかげで封をする黒テープ(マットタイプ)が切れたので、中谷さんが持っていた撮影用のマスキングテープをお借りした。この頃、突然大雨が降りはじめた。屋根から少し雨水が漏れていた。

17時半ごろ、ヤマトの集荷が到着。雨は止んでいた。送り先の伝票を10個の黒い箱に適当に貼りつけて、配達員の方に手渡していく。17時40分ごろ、トラックを見送る。発送は2日後なので、もうしばらくはこの辺りにいるのだと思う。無事に配達されることを祈って、劇場を後にした。

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