インテリア / Interior

【ワークショップ+上演 参加者募集】
着物に「もやもや」している人を探しています
創業1720年の京都の着物メーカー問屋「矢代仁」が取り組むプロジェクト「YSN(ゆっくり しっかり のこす)2025」にて、『(きものの)しまいかた』というプログラムを実施します。着物にまつわる「もやもや」を抱えている参加者が集まり、数回のワークショップを通じて、身近な着物についての記憶や経験を共有しながら、最後に一度限りの簡単な上演をおこない、着物との関係を整えることを目指します。そして、その活動の記録を2025年10月に開催予定の「YSN2025」にて展示する予定です。この機会に身近にある着物との関係について考えてみませんか。ご参加をお待ちしています。
YSN2025
[調べもの→上演→展示]
(きものの)しまいかた
How to Place Your Kimonos
声がけとあいづちから始めてみる
捨てるには忍びない。
持ち続けることも、少し重たい。
きものに関する「もやもや」のなかには、
ただの「もの」ではない、きものならではの
特別な意味と責任が潜んでいるように感じます。
きものに関する調べもの 「YSN:ゆっくり しっかり のこす」の本企画では、「もの」と「ひと」の関係について創作をおこなってきた演出家・福井裕孝とそんなきものとの関係性を再認識し、よい距離感を探っていきます。
きものを着るまでのさまざまな行為に焦点をあてながら、
きものそのものにある思い出や感情と対話して、
「このきものたち、どうしよ?」を一緒に考えてみようと思っています。
【家のきものにまつわる「もやもや」(と声がけの一例)】
・誰が、どこで買ったきものなの(どこから来たの?)
・誰がどういうときに着ていたの(どこに行ったことある?)
・どう手入れすれば、着れるようになるの(どうされたい?)
・この素材・柄・形状は、どのような機会に着るべきなの(どこに行きたい?)
・ものとしての価値はどれくらいあるの(誰かいい人、いないかね?)
・ちゃんと保管すれば自分の次世代も着れるの(いま何歳なんだろう?)
e.t.c...
YSN2025『(きものの)しまいかた』について(福井裕孝 × 矢代真也)
「着る」の前に考えるべきこと
矢代真也(YSN責任編集・矢代仁)
きものの仕事をしていると「親族が着ていたきものを何とかしたい」という相談を受けることがあります。その背後には、まず「きものは着れない」、だけど「捨てたくない」、何より「きものはよくわからない」という感覚が見え隠れします。
着方やお手入れの方法だけでなく、「手放しかた」もよくわからないというわけです。ただ、きものに対して「捨てたくない」「お金にしたいわけではない」「どうしたらいいかわからない」と、もやもやされる方が多いという事実には、きものの商売を続けるためのヒントがありそうだなとも思っています。
創業1720年のきものメーカー・矢代仁が昨年スタートした「YSN:ゆっくりしっかりのこす」の第2回では、「うごく、あつまる、きものになる」と題して、「着る」にフォーカスした調べ物を2025年10月に展示に向けて進めています。きものという「商品」が「きもの」になるには「着る」が不可欠である。そんな仮説のもと、様々な分野の専門家と議論を重ねています。
ただ、ここまで「着る」について考えてきましたが、そもそも「着る」の前にあるハードルとも向き合わないといけないのではないかと思いました。そのひとつの象徴が、先ほど申し上げた「着れないけど捨てたくないきもの」です。これをまずは整理して、自分にとってどんな存在か直視し、「もやもや」を処分しなければ、「着る」という行為に行き着かないと思うのです。
もしかしたら、きものに関していえば「手放す」という言葉は間違っているのかもしれません。世代をこえて受け継ぐことが可能なきものは、わたしたちの寿命よりも長く存在しうるものです。それを「手放す」ことができるというのは人間の傲慢な考えで、きものそのものがもつ運命に「ゆだねる」のが正しいという可能性もあります。そのためには、きものをしまいながら、それと向き合ってこなかった自分の過去を見つめ直していく必要があるはずです。
今回のYSNでは、人とモノの関係にフォーカスを当て創作活動を行なってきた演出家・福井裕孝と「きもの」に関するワークショップ・上演を実施いたします。「お手元にきものをお持ちである/それをどうするか決めかねている/誰かとどうするか考えたい/考えたことを人前で発表してもよい」という4つの条件を満たす方とワークショップを実施しながら、上演する内容を考えていこうと思います。
わたしたちも、実際にどのような内容のプログラムになるかはわかりません。ただ「ゆっくりしっかりのこす」ためには、みなさまのもやもやと向き合う必要があると考えています。もし可能であれば、ご協力どうぞよろしくお願いいたします。
しまう(仕舞う、終う、???)
福井裕孝(演出家)
わたしはこれまで、演劇における「人・もの・空間」の関係性に関心を抱きながら、創作をおこなってきました。今回、YSNチームと話を重ねるなかで、モノとしての「きもの」、それらをしまう「箪笥(たんす)」という場所、そしてそれを所有する「人」の三者の関係性に意識が向かいました。
わたしたちの手元にある着物の多くは、家族や友人、大切な誰かから引き継いだものや譲り受けたものが多いのではないでしょうか。寿命の長い着物は、単なる所有物というよりも、人から、家族から、時代から、あるいは着物という文化から託され、一時的に「預かっている」ものといえるかもしれません。
「預かっている」大切なものであるからこそ、愛着や責任を感じる一方で、それをずっと抱えることの苦悩や煩わしさもあるのではないかと思います。そういった心の「もやもや」とともに「箪笥」の中にしまい込んだままになっているのだとしたら、それは人にとっても、着物にとっても、不健康な状態といえるかもしれません。まずは、わたしたち一人ひとりにとって最も身近な着物にまつわる「もやもや」と向き合うことから始める必要があると考えました。
そこで今回は、着物を「しまう」ための上演に取り組んでみたいと考えています。着物をあるべき場所や文脈に「しまう(仕舞う)」。あるいは、着物との関係を「しまう(終う)」。単に着物を「手放す」「処分する」ためのワークショップというわけではありません。ある関係性から託された着物を、託された者なりの責任をもってどのようにあつかうべきか、ということを参加者とともに考え、気持ちに区切りや折り合いをつけながら、着物との関係を円満に整えていく。そのような機会となることを願っています。
実際に何をするのかというと、それほど特別なことをするわけではありません。まずは、それぞれの着物について語り合ったり、何か具体的な出来事や場面を再現したりすることから始めてみます。着物にまつわる個人的な記憶や経験をふりかえり、ときに知らない過去や未来について想像すること。そして、自分の言葉で語りなおし、身体を使って演じること。それを他人に聞いて/見てもらうこと。わたしがこれまで取り組んできた演劇にまつわるあれこれが、着物との関係を整えるのに、きっと役に立つんじゃないかと考えています。
着物を手放したいと考えている人も、手放すかどうか迷っている人も、そういや家に着物あったかもな、という人も、まずは着物とそれにまつわる「もやもや」を持ち寄って話し合ってみませんか。みなさんのご参加をお待ちしています。
企画概要
本企画には、参加型のワークショップ(A)、参加者を交えた上演(B)、ワークショップと上演の展示(C)という3つのプロセスがあります。AとBについて、ご参加いただける方を募集しております。以下の要件をご確認いただき、ご興味がある方はフォームからお申し込みいただけますと幸いです。
【募集要件】
・お手元に着物をお持ちである方
・それをどうするか決めかねている方
・どうするか誰かと考えたい方
・考えたことを人前で発表してもよい方
[応募フォーム]
https://forms.gle/nFpsesEDwHi1r8A68
募集締切:2025年7月23日(水)
【日程・場所】
A:ワークショップ
京都市内でワークショップをおこないます。初回(8月2日)は参加が必須となっています。その後、個別に「上演に向けたワークショップ」を下記日程のうち2日ほどを目安にそれぞれ調整させていただきます。
日程:
8月2日(土)13:00–17:00 ⭐︎参加必須
8月9日(土)13:00–17:00
8月11日(月・祝)13:00–17:00
8月23日(土)13:00–17:00
8月24日(日)13:00–17:00
8月30日(土)13:00–17:00
8月31日(日)13:00–17:00
場所:京都市内
※ワークショップの進行具合や参加者のスケジュールを踏まえて日程が増減する可能性があります。
※上記の日程で参加できない場合は別途調整をさせていただきます。お気軽にご相談ください。
B:上演
9月2日に京都市内の会場で上演を予定しています。合わせて前日に行う予定のリハーサルにもご参加いただきますようご協力をお願いいたします。
9月1日(月)18:00-21:00 上演に向けたリハーサル
9月2日(火)18:00-21:00 上演(有観客)
C:展示
10月1日(水)- 12日(日) 11:00〜18:00
場所:Gallery SUGATA(京都府京都市中京区蛸薬師町271-1)
YSN(ゆっくり しっかり のこす)2025
着物を考えるための調べもの
「うごくかさなる きものになる」編
日程:10月1日(水)-12日(日)
場所:Gallery SUGATA(京都府京都市中京区蛸薬師町271-1)
主催:YSN Studio(株式会社矢代仁)
お問い合わせ
矢代仁(やしろに)
享保5年(1720年)に京都室町で創業した着物のメーカー問屋。「御召」とよばれる第11代将軍・徳川家斉が愛好した肌着に起源をもつとされる織の着物を祖業とする。現在は織・染・繍のオリジナル商品、人間国宝をふくむ作家の作品を全国の百貨店や各有名呉服店に展開している。
〒604-0021 京都市中京区室町通二条南入蛸薬師町272-2
WEBサイト