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Photo by Yujiro Sagami

シアターマテリアル(仮)

Theater Material

劇場を確かめるための観察と記録

 

THEATRE E9 KYOYOの建物/敷地の中にある「もの」をすべて撮影、記録するプロジェクトを始めます。公演に用いられる劇場備品や機材などをはじめ、ホワイエにあるベンチや傘立て、楽屋のテーブルや冷蔵庫、トイレットペーパー、雑巾、ドアマット、灯油ストーブ、誰かの自転車、床に落ちている木片、外に廃棄されている古紙の束まで(?)。それらの「もの」はどこからやって来て、普段どのように使われているのか。公演活動に直接関わりがあるものもそうでないものも全て尽く集めて分類・記録し、「もの」という単位から劇場という環境を捉え直します。

アソシエイトアーティスト一年目となる今年は劇場備品を中心に記録作業を進めるほか、その作業の過程で舞台上に集まった「もの」を前に、第1期アソシエイトアーティストでもある村社祐太朗のテキストを用いて一度限りの上演を行います。劇場の「もの」が一堂に会する場に是非お立ち会いください。

(劇場の)建物があります 

 

 三四郎のANN0にゲストで来たなかやまきんに君が「最近見た映画はなんですか?」というリスナーからの質問に答える場面。「映画館で見た映画でもいいですか?」と前置きした後「(映画館の)建物があります」と、その映画を見た映画館の説明から始めようとする。「映画館の説明はいいです」と小宮にツッコまれた後も、同じ質問に対して「建物があります」「建物があります。の映画館で見た映画でもいいですか?」と執拗に繰り返すので一向に話は進まない。「建物があります」と発される度に話は無に帰され、そこには「建物」だけが残る。

 きんに君の「建物があります」をあえて真に受けると、語りの内容に先立つその場の状況を明らかにすること、つまり映画を見た映画館の「建物」があるという状況を確認することから始めないことには、そこで経験した出来事についての語りは成立しないんじゃないかという物語ることへのためらいがあるように思えます。だから「建物」を前に「建物があります」と反復することで、漠然とした広がりやただの容れ物でしかなかった空間が、現実にかたちとして「ある(あった)」ことを確かめる。ためらいが生じる度に立ち止まって「建物」のレベルにまで立ち返り、物語をやり直そうと試みる。それを繰り返すうちに映画を見た話なんかはもうどうでも良くなって、そこにはやっぱり「建物」だけが残る。

 劇場で作品を作るときに同じようなことを考えます。演劇的な想像力よりも物理的な限界としての「建物」のあらわれが先立ってしまうこと。演劇はきっとそういう現実の“しょうがない”問題を自明のことと了解した上で何かをなそうとするものだと思いますが、それでもなお劇場の「建物」を前に上演をためらい沈黙を選び取りたくなることがあります。これから数年間この劇場で作品を発表していくことを見据えたときに、まずは劇場を前にして「(劇場の)建物があります」と言い切ってしまうことから始めないといけないと思いました。そのために劇場の「建物」をはじめ、そこにあるすべてのものを一つ一つ手に取り、よく見て、写真に収め、整理し、記憶化していく。わざわざ言及するまでもない当たり前の現実をわざとらしくなぞって確かめていく。その地道な作業を積み重ねてようやく劇場に相応わしい上演を構想できるのかもしれません。

​福井裕孝

『シアター・マテリアル(仮)』

202295日(月)〜911日(日)

THEATRE E9 KYOTO

演出・記録:福井裕孝

写真:相模友士郎

​撮影アシスタント:中川桃子

作業アシスタント:阿部優輝、金子仁司、清水花菜、田辺泰信、西原彩香、東 千尋、米川 幸リオン

 

上演テキスト:村社祐太朗

出演:斉藤ひかり

主催・企画製作:福井裕孝

共催:THEATRE E9 KYOTO(一般社団法人アーツシード京都)

THEATRE E9 KYOTO 第3期アソシエイトアーティスト

 

[記録]

日時

202295日(月) 〜2022910日(土)

​※記録作業は非公開です。

※収集した記録はアソシエイトアーティストの活動期間中に何らかの形での公開を目指します。

[上演]

​上演テキスト

『川下』(村社祐太朗)

 

日時

2022911日(日) 15:00-

​※上演時間は約20分を予定しています。

※受付は開演の30分前、開場は20分前を予定しています。

​場所

THEATRE E9 KYOTO

京都市南区東九条南河原町9-1

アクセス情報

・JR 「京都」駅八条口から徒歩約 14 分 

・JR ・京阪「東福寺」駅から徒歩約 7 分 

・京都市営地下鉄「九条」駅から徒歩約 11 分 

・京都市バス「河原町東寺通」(16, 84 系統)より徒歩約 3

・京都市バス「九条河原町」 (16, 202, 207, 208, 84, 88系)より徒歩約 6

料金(自由席・税込)

前売:2,000円 当日:2,500

 

予約

THEATRE E9 KYOTO HPより

 

 

プロフィール

相模友士郎(さがみ・ゆうじろう)

1982年福井生まれ。70歳以上の伊丹の高齢者たちと制作した『DRAMATHOLOGY/ドラマソロジー』(2009年)で鮮烈なデビューを果たし、その後も様々なコミュニティに入り込みながら、見るという身体的経験を問い直す上演を続ける。14年にダンサーの佐藤健大郎との共同制作による『ナビゲーションズ』を発表、各地で再演を重ねる。19年に植物による無人劇『LOVE SONGS』をCIRCULATION KYOTOにて発表。

中川桃子(なかがわももこ)

1992年京都生まれ。京都芸術大学美術工芸学科写真・映像コース在学中。右足の骨折を転機に写真をはじめる。最近では「アートにおける報酬系回路の刺激とそこから生まれる善循環」というテーマをもとに制作する。展示歴として、「写真は変成する2 BLeeDing eDgE on PoST pHotOgRapHy」(キュレーション:後藤繁雄+多和田有希)など。 

村社祐太朗(むらこそ・ゆうたろう)

新聞家主宰。演劇作家。訥弁の語りを中心に据え、書くことや憶え繰り返すことを疎外せずに実現する上演を模索中。2019-20年度公益財団法人セゾン文化財団セゾンフェローⅠ。2020-22年度THEATRE E9 KYOTOアソシエイトアーティスト。

 

斉藤ひかり(さいとう・ひかり)

1996年大阪府出身。大学生の時に演劇を始めて、今は劇研アクターズラボ伊藤拓也クラスに参加中。

福井裕孝(ふくい・ひろたか)

1996年京都生まれ。演出家。人・もの・空間の関係を演劇的な技法を用いて再編し、その場の状況を異なる複数のスケールやパースペクティブから再提示する。近作に『インテリア』(2018, 2020)、『シアター・マテリアル』(2020)、『デスクトップ・シアター』(2021) など。下北ウェーブ2019選出。ロームシアター京都×京都芸術センターU35創造支援プログラム“KIPPU”選出。2022年度よりTHEATRE E9 KYOTOアソシエイトアーティスト。

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